研究職の年収を徹底解説|給料・初任給手取り・賞与(ボーナス)・各種手当
研究職と聞くと、興味がある分野の開発や研究に携わりたい人にとってはまさに憧れの仕事。
一般職よりも高収入のイメージも強い職業です。
研究職も視野に入れ、就職活動や転職活動をする人も多いのではないでしょうか。
研究職と一言で言っても、就職先となる企業の規模や種類、研究する内容などは様々。
そのため、実際にどのくらいのお給料を貰えるのか、よく分からないというのが現実です。
そこでこの記事では、研究職の年収について、あらゆる視点から徹底解説します。
研究職の平均年収は500万円が相場
研究職の仕事は多岐にわたり、更に企業規模により待遇が異なります。
また日本の場合、年功序列の風土も強く残っているため、年齢ごとに一定の開きがあります。
それを踏まえた上で、研究職全体の平均年収は500万円程度と考えて良いでしょう。
研究職の年収・給料の構成要素
研究職の年収の内訳は一般職と基本的には変わりません。
「基本給」「能力給」「歩合」「ボーナス」のから構成されています。
民間企業であれば一般職より少し高額、独立行政法人であれば法人が設置されている自治体の公務員給与と同じ程度で計算されています。
一部の民間企業では、能力や成果に基づく年俸制を採用しているケースもあります。
基本給・能力給などはどうなっているの?
研究職の基本給の大枠は年齢によって決定されます。
更に、大学卒、大学院卒、前職の実績なども勘案されます。
特別なスキルや実績がある人がヘッドハントされた場合、一定以上の能力給が加算され、同世代の研究職よりも高収入になることがあります。
大卒の研究職の場合、研究経験がほとんどないため、助手のような位置付けです。
そのため、基本月給は25万円程度からスタートします。
経験を積むことで、研究職としてできることが増えていきます。
そのため10年、20年と勤め続ければ基本給は自動的にアップします。
賞与(ボーナス)はどれくらい?
研究職の賞与の金額は、企業の規模や方針によって変わります。
一般職と基本的に変わりませんので、賞与は年に2回のケースが多いようです。
金額については、企業の規模や方針、専門分野により異なります。
多いところでは400万円弱が支給されるケースもありますが、基本的には40万円から50万円あたりからスタート。
研究職としての経験を積み、40代ほどになったら100万円ほど貰えることもあります。
ただ、年俸制で契約している場合、ボーナスは支給されません。
各種手当はどういったものがある?
研究職は、一般職と同じように各種手当がつきます。
基本となるのが通勤手当や住宅手当です。
手当の上限は企業の方針により異なります。
また、いわゆる手当とは少し趣旨が異なりますが、研究費が支給されることもあります。
副収入はどれくらい?
研究職の分野によっては、勤め先が認める形で副収入が得られることがあります。
例えば、シンポジウムやセミナーにおける講演料、書籍の執筆や監修の原稿料、謝金、印税、テレビや雑誌等のメディア出演により副収入が発生する人もいます。
副収入の有無は、研究内容のニーズやその人の知名度に異なります。
研究職の職位ごとの年収を見る
研究職の収入は、純粋な勤続年数に加えて、職位によっても変わってきます。
一般職であれば主任、係長、課長、部長となるところ、研究職の場合は研究員、主任研究員、課長、部長と序列化されています。
研究員の場合の年収
研究職に就いたら企業内にある研究グループ(研究室)に所属します。
新卒の場合は研究員からスタートします。
同じグループの先輩や上司の指示を受けながら、研究や開発に取り組んでいきます。
特に大学を卒業してすぐに研究員になった場合、自分一人の責任でできる仕事は多くありません。
そのため年収は平均300万円~400万円前後と、意外と低く設定されています。
ただ研究分野によっては、大学院を修了していることで、若干ですが年収は上乗せされます。
主任研究員の場合の年収
着実に経験を積んでいけば、20代後半から30代前半にかけて、主任研究員に昇格します。
主任研究員の場合、研究の一部を完全に任せてもらえるのみならず、後輩研究員の指導にもあたります。
小規模なチームリーダーを任されることもでてきます。
主任になると、通常の研究員と比較して自立的にできる仕事が格段に増えてきます。
また、成果が出せる確率も高まってきます。
そのため年収も、平均して400万円~500万円ほどと、研究員時代よりは高くなります。
課長の場合の年収
課長になると、研究員や主任研究員の研究進捗に加えて、プロジェクトの管理も任されます。
能力があると評価された人は、会社が力を入れている予算規模が大きな研究・開発、更には大学研究者との共同研究に携われる機会が増えてきます。
課長に昇進するのはおおよそ30代後半から40代にかけての時期です。
このとき年収は500万円~600万円あたりであることが多いようです。
大きな成果をあげられたら、他企業や研究所からヘッドハントの話が出てくることもあります。
部長の場合の年収
部長となると、複数の研究・開発プロジェクトを統括する立場になります。
各プロジェクトに配分する予算の決定、部下の評価にも関わります。
国内外の研究所と交流する、企業を代表して学会発表するなど、企業の顔として活躍する人もいます。
部長なるのは50代以上が多く、年収は平均800万円前後、大企業なら1000万円ほどになることもあります。
大企業で部長クラスになると、かなり巨額の予算を動かす機会も出てきます。
そのため高額の能力給等が加算されるケースも出てきます。
研究職は、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?
研究職の年収は、国内大企業であれば最高で1000万円を目指すことができます。
日本の場合、もちろん成果主義を導入している企業もあります。
しかしながら、チームワークを重視する風土から、基本的には年功序列が重視されます。
そのため、大きな成果を上げたから年収が直ちにアップすることは少ないようです。
ただし外資系企業や海外企業の研究職に就いた場合、成果主義の年俸制が敷かれていることが多いため、年収が1000万円を超えるケースも少なくありません。
研究職はどういった勤務先だと年収が高くなるか?
研究職で高年収を目指すのであれば、大企業に就職することが大前提です。
グローバルに事業を展開している企業は、国際的な競争にさらされており、海外から有能な人材を招聘することが多々あります。
高度な専門性を持った人材を集めるため、給与などを高く設定する傾向があります。
JAXAで働く場合の研究職の年収
JAXA(宇宙航空研究開発機構)は、宇宙・航空に特化した研究・開発を行う機関です。
小さなころからJAXAで働きたいという夢を持っていたという人も多いのではないでしょうか。
JAXAには、基礎研究から応用研究に至るまで数多くの研究グループがあります。
それらを統括する部長は1043万円ほど。
課長の場合は959万円、主任研究員は773万円、研究員は495万円ほどと言われています。
花王で働く場合の研究職の年収
私たちの生活に欠かせない商品を数多く製造している花王の平均年収は約821万円です。
その中で研究職の平均年収は507万円ほど。
主任研究員になると約732万円。
課長クラスになると年収は866万円ほどにアップし、部長クラスで約959万円となります。
研究職は男性のほうが多い傾向にあります。
しかし、花王のような日用品を製造する企業の場合、女性研究員の活躍が目立ちます。
地方独立行政法人鳥取県産業技術センターで働く場合の研究職の年収
独立行政法人に就職すると、公務員に近い形の研究職に就くことになります。
独立行政法人は地方自治体の機関の一部であるため、給与制度は基本的に全て都道府県の規定に従って決定されています。
地方独立行政法人鳥取県産業技術センターの研究職の初任給は最終学歴により変わります。
博士課程修了者は23万2700円、修士課程修了者は20万5000円、大卒は18万3400円、短大卒は16万2100円です。
大卒の場合、5年で24万5600円、10年で29万5567円、20年で36万600円と昇給します。
そこに期末手当や勤勉手当等がつくようです。
年収に換算すると250万円~630万円ほどと開きが出てきますね。
日本ロレアル株式会社で働く場合の研究職の年収
日本ロレアル株式会社は、フランスにある化粧品会社L’Orealの日本法人です。
外資系の企業であるため、年功序列型の日本の研究職とは雰囲気が異なるようです。
一緒に働く上司や同僚は外国人が多く、それゆえ成果主義により評価される傾向があります。
日本ロレアル株式会社は、日本企業の研究職と比較すると、年収は高めに設定されています。
30代で主任研究員になり、一定の評価が得られたら、600万円ほどの年収が見込めます。
着実に実績を積めば、50代を前に年収1000万円も不可能ではありません。
ただ、ミーティングは全て英語。
主体的に動かないと成果を出せないため、日本人には向き・不向きが出るかもしれません。
NECで働く場合の年収
NECはパソコン等でも有名な日本の電機メーカー。
研究職を対象に、新卒であっても能力があれば年収1000万円を超えられる給与制度を開始し、ニュースなどでも話題となりました。
研究職は最終学歴と勤続年数により年収がある程度パターン化されていることは、これまで触れてきました。
NECの取り組みは、そのような給与制度に一石を投じるものでした。
新卒でNECに入社した場合、大卒が21万1500円、修士課程修了で23万5500円、博士課程修了で28万9000円が初任給。
通常は、一般職の給与制度にやや上乗せしたのが研究職の年収となります。
しかしNECはそれを抜本的に見直し、実力次第で20代にして1000万円を超える年収が得られる可能性を作りだしました。
大学の付属のセンターで働く場合の研究職の年収
大学の研究者は基本的に教育職に位置づけられますが、付属のセンターには、研究に専念する研究職ポストが存在します。
大学の研究職の年収は、国立大学か私立大学か、自然科学系か人文社会科学系か、常勤か非常勤かでかなりのバリエーションが生まれますので、研究職の収入も一律には言えません。
平均すると助教クラスで年収280万円~400万円の間、准教授クラスで400万円~600万円の間、教授クラスで600万円~1000万円、もしくはそれ以上となります。
最近の大学研究職は年俸制が中心のため、手当や退職金がないケースが増えています。
研究職の年収の決まり方や、年収が高い人の条件・スキル・特徴は?
研究職は基本的に年功序列のため、勤続勤務の長さにより、年収が変わってきます。
その上で研究・開発に役立つスキルや経験があると、高年収を目指すことができます。
1.最終学歴
研究・開発の分野にもよりますが、最終学歴により年収に若干の違いが生じることがあります。
専門性が高い分野では、博士課程を修了している場合、初任給が高く設定されます。
一方、生活に関わる商品開発系の研究職は、大卒と院卒の間に差を設けない企業が目立ちます。
なぜなら、専門的な知識よりも生活に根差した問題発見・解決能力の方が、研究職の資質として重要になるからです。
2.語学力
企業によっては、海外人材を研究職として採用しているところも少なくありません。
そのため、英語でコミュニケーションをとる企業も目立ちます。
また、高収入のポストほど、海外研究者との交流や、英語論文の調査・執筆に関わる機会が増します。
そのため、英語等を使った高度なコミュニケーション能力があると、高収入の仕事に就ける確率が高まります。
3.海外企業勤務歴
転職して研究職に就く場合、海外企業の勤務歴が年収アップに繋がります。
特に大企業の場合、国際的な競争力を供えることがミッション。
そのため、海外で研究職として働いた経験の評価は高く、能力給として加算されることがあります。
世界的に有名な海外企業に勤めていた人ほど、査定評価が良くなる傾向があります。
4.共同研究実績
自然科学系の研究職の場合、大学や大学院で所属していたゼミや共同研究の実績が、年収アップを後押しすることがあります。
研究・開発を進めていく中で、大学との連携は不可欠です。
企業の研究・開発の促進に繋がるネットワークがある人材は、何かと評価に繋がる機会が生まれます。
その結果として年収が高くなる傾向があります。
これから研究職になる人へのアドバイス
研究職は平均すると、世間で思われている程高収入ではありません。
すぐに研究の成果が出るわけではなく、場合によっては何十年も試行錯誤することもあります。
だからこそ研究職の仕事を楽しむのであれば、自分が関わる研究・開発に対する興味を持ち続けることが大切。
日々勉強という姿勢を持ち続けられる人が、研究職に向いていると言えるでしょう。
さいごに
研究職の年収について、様々な角度から解説してきました。
一言で研究職と言っても、企業規模や研究内容により、その年収にはかなりばらつきがあります。
ただ、研究・開発を続けることで、大ヒット商品を世に送り出せる、世界を驚かせるイノベーションの実現に関われる可能性がある点は共通しています。
そのため、年収だけではなく、信念や情熱もセットにして就職先を決めることで、やりがいのある仕事と出会えるでしょう。
最終更新日:2020年4月27日