警察官の年収を徹底解説|給料・賞与(ボーナス)・各種手当
ドラマでも古くは「あぶない刑事」や「西部警察」、今ではおなじみの「相棒シリーズ」など、テレビでも描かれることが多い警察官。
杉下右京は一体いくら位貰っているのでしょうか?
また景気の変動に左右されにくく安定した収入があるイメージもあり、昨今人気の職種でもあります。
警察官のリアルな年収事情を調べてみました。
警察官の平均年収は700万円が相場
警察官と一口に言っても、働く地域・階級・能力・手当等、様々な要因で収入は変わってきます。
総務省の調査をもとに平均年収を計算すると、平均年齢38.4歳で約700万円となります。
(総務省:平成30年地方公務員給与実態調査 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/kyuuyo/h30_kyuuyo_1.html
平成31年度地方公務員給与実態調査の概要 https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei12_02000001.htmlより)
少し詳しく見てみますと、平均給料月額が320,732円(勤続年数17.2年、学歴・性別を分けない総数)で、諸手当平均月額が135,496円で計456,228円となっています。
他の地方公務員の全体の平均給料月額が329,673円(平均勤続年数19.7年)、諸手当平均月額が85,876円で計415,549円であることを考慮すると、警察官は諸手当が多く支給されていることが分かります。
警察官の年収・給料の構成要素
それでは、公務員である警察官の給与はどのように決まっていて、どのような名目で構成されているのでしょう。
警察官の給与体系はまず本給(給料)と手当に分けられます。
手当に関しては後で触れるとて、本給の内容を調べました。
基本給・能力給などはどうなっているの?
警察官の本給(給料)は一般の公務員と同じく俸給と言います。
これは民間企業で言うところの基本給にあたるもので、国家公務員は内閣人事院が発表する人事院勧告に従って俸給が決まります。
地方公務員は各都道府県自治体が人事院勧告に準じて俸給表を設定している場合もあれば、独自で設定している場合もあります。
なぜここで国家公務員と地方公務員を紹介したかというと、警察官には入るときの試験で国家公務員と地方公務員の2種にわかれるからです。
国家公務員総合職試験を合格した者(キャリア)と国家公務員一般職試験を合格した者(準キャリア)は国家公務員となり、地方公務員試験を合格した者(ノンキャリア)は地方公務員となります。
この人事院勧告や都道府県が設定した「公安職俸給表」に従い警察官の本給が決まりますが、その要素は階級によって変わる「級」と勤続年数や功績・能力を考慮した「号」によって最終的に個人の本給(給料)が決まります。
(参考:令和元年人事院勧告 報告・勧告 俸給表より https://www.jinji.go.jp/kankoku/r1/pdf/1kankoku_kyuuyo_bekki.pdf)
警察官の階級は低い順に巡査・(巡査長)・巡査部長・警部補・警部・警視正・警視・警視監そして警視総監と上がっていきます(巡査長は階級的呼称)。
俸給表における1級が巡査、3級が巡査部長、5級が警部、7級が警視といった具合に階級が上がるごとに「級」も上がっていきます。
「級」と「号」で同じ階級内でも、個人の年齢やその他の判断材料によって本給(給料)は大きく違ってきます。
賞与(ボーナス)はどれくらい?
2018年の人事院勧告で増額改定が行われ、年間で4.45ヶ月分支給されています。
恐らく2019年も同水準と予測できますので、先の総務省の資料をもとに計算しますと、360,160円(本給+扶養手当+地域手当)×4.45で平均1,602,712円となります。
人事院勧告では民間企業のデーターを基に算出されていますが、民間企業のように業績によって乱高下することはなく、概ね微増か微減を繰り返しながら徐々に増えていく傾向にあり、安定した収入を期待できます。
各種手当てはどういったものがある?
他の公務員よりも警察官の収入が多いのは、手当の支給が手厚いからと言っても過言ではありません。
もちろん警察官という職業の性質上、危険と隣り合わせであったり理不尽な現場や場面に対処せねばならない時もあります。
また昼夜問わず勤務しなければならない時もあり、手当が多くても当たり前とも言えます。
それではどのような手当てがあるのか調べてみました。
(参考:平成19年度 香川県 http://img.p-kit.com/kobayashilawoffice/kagawa-19/1373008638008661300.pdf )
生活給的手当
- 扶養手当・・・配偶者13,000円 配偶者以外 各6,000円など
- 地域手当・・・(給料+給料の特別調整額+扶養手当)×地域別支給割合
- 住宅手当・・・借家住居職員手当や自宅住居職員手当など、詳細規則あり
- 通勤手当・・・民間企業同様、詳細規則あり
- 単身赴任手当・・・基礎顎23,000円+距離区分に応じた額(支給限度額有り)
超過労働的手当
- 超過勤務手当・・・勤務1時間につき、1時間当たりの給与額の25%~160% その他 詳細規定有り
- 休日給・・・勤務1時間につき、1時間当たり給与額の135%
- 宿直手当・・・事件当直等 1回 7,200円
- 管理職員特別勤務手当・・・管理職手当を受ける職員が、臨時又は緊急の必要等により週休日又は休日に勤務した場合 管理職の役職に応じて金額の規定あり
職務給的手当
- 給料の特別調整額・・・管理職手当。俸給表別(号)、級別、職の区分別の定額
- 特殊勤務手当・・・勤務の特殊性(著しく危険、不快、不健康等)の実情により定率又は定額を支給(例:爆発物取扱い等手当・死体処理手当・鑑識作業手当など)
- 特地勤務手当等・・・離島その他の生活に著しく不便な地に所在する公署に勤務する職員
- 夜勤手当・・・勤務1時間につき、1時間あたりの給与額の25%
賞与的手当
- 期末手当(ボーナス)・・・各都道府県規定により支給
- 勤勉手当・・・勤勉手当基礎額に乗じる標準支給割合で支給
その他手当
- 派遣手当・・・国等から派遣された災害対策基本法などに規定する職員に支給
以上のような手当が支給されています。
警察官は、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?
警察官でより高い年収を目指すなら、国家公務員総合職試験に合格して警察庁の警察官(キャリア)になることが必須となるでしょう。
この場合、階級は最初からいきなり警部補になります。
警察庁に入ったキャリアは国家公務員として元々将来の幹部候補として採用されていますので、警部補からスタートした後、警部、警視と昇進試験を経ることなく出世していくシステムとなっています。
現場の警察官とは昇進のスピードが全く違い、警察の重要なポストはほぼキャリアが握っているのが実情です。
年齢は近くても、ドラマ「踊る大捜査線」の青島(巡査部長)と室井(警視)みたいな関係になります。
キャリアの中でも一握りの者しかなれないポストが警視庁のトップである「警視総監」と、警察庁トップの警察庁長官です。
どちらも定員は1名で俸給はキャリアの警察官に使われる「公安職俸給表」ではなく、「指定職俸給表」という国家公務員の最高幹部クラスの俸給表が使われます。
一般職の職員の給与に関する法律(平成29年12月15日改正)の別表第11によりますと、警察庁長官の俸給(基本給)は8号俸と最高額の1,175,000円、警視総監の俸給(基本給)は7号俸の1,107,000円となり、事実上警察官で最高の給料が支給されるのは警察庁長官ということになります。
ちなみに警察庁長官の年収は、あくまで推定ですが1500万円~2500万円位で、次に高い収入の警視総監は1500万円前後位だと言われています。
どちらの職も日本に一人ずつしかいない、まさにトップの役職で、ノンキャリアから就いた人は誰もいません。
地方公務員試験で採用された警察官(ノンキャリア)の方々が現実的にどのぐらいまで収入を上げることができるかというと、階級と年齢次第と言えます。
年功序列で号俸は必ず上がっていくのに対し、勤務態度や昇進試験の結果で階級は上がります。
よくある例ですが、若い警部よりベテランの警部補や巡査部長の方が給料は良いはずです。
ちなみに警部補の推定年収は430万円~900万円位で、警部の推定年収は580万円~980万円位です。
この上の階級である警視がノンキャリアのほぼ限界の階級で、地方公務員は警視以上の階級に上がることはできません。
というのも、次の階級である警視正からは一般職国家公務員(地方警務官)となり、ノンキャリアでは最速で昇進しても50歳代で、その数は極めて少数となります。
警視の推定年収は600万円~1000万円、警視正は年収650万円~1000万円と推定されます。
年収の低い警視や警視正は全てキャリアで、採用から7年で一斉に警視になり、採用後15年の30歳代で警視正となります。
以上からノンキャリアが目指せる最高の年収は、現実的には大変少ないですが警視になり定年を迎えて1000万円位の金額になるでしょう。
ちなみに新卒から定年の60歳まで勤め上げれば、巡査長の階級でも退職金2500万~3000万円程あり、再就職先も困らないので老後も安心です。
(参考:e-Gov 電子政府の総合窓口 https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=325AC0000000095#1676 より)
警察官はどういった勤務先だと年収が高くなるか?
警察官の年収は警視庁で採用されたキャリアであっても、地方公務員採用試験で都道府県に採用されたノンキャリアであっても、俸給表を基準に昇進にて上がる「級」と主に年功序列で上がる「号」によって決められています。
年収を上げるその他の要素は「手当」ということになりますが、年収を上げる一番の方法は「早く昇進する」に尽きるでしょう。
警視庁で働く場合の年収
国家公務員総合職試験に合格し警視庁に入ると、警視庁警察学校で6ヶ月間の研修を受け警部補として交番実務を経験します。
そして翌年には試験なしで全員警部に昇進(最年少で23歳)、その後採用から4年~7年目頃(ほぼ30歳まで)に全員警視に昇進します。
この時点での年収は600万円~と推定されますが、まだまだ若いですから他の職業と比べても突出して高いわけではありません。
採用11年~16年位(40歳代中頃にかけて)になると、ほぼ全員が警視正へと昇進します。
その後警視長、警視監へと50歳中ごろにかけて全員が出世していく中で、年収は1000万円~1200万円位になると推定できます。
ただ国家公務員総合職試験に合格した者の中でも、大変人気がある警視庁に採用される人数はごく少数で、平成28年度は約30名となっていて都道府県の採用者数合計約15,000名の約0.2%で、まさに幹部候補を約束された狭き門と言えます。
国の治安を担う大変責任の重い仕事ですから、それだけ優秀な人材を慎重に選んでいることがわかります。
大都市で働く場合の年収
都道府県の間でも年収にはある程度の差が認められます。
具体的には平成28年の資料で東京都は平均年収約770万円ですが、青森県は約628万円となっています。
その他上位から、大阪府約767万円・愛知県約748万円に対し、下位からは熊本県約633万円・鳥取県約636万円と年収にして100万円以上の開きがあります。
これは大小様々な事件が多く発生する大都市圏には、地域別の手当や残業手当が多く支給されていることが理由でしょう。
ただその分忙しいことは間違いなく、どちらが良いのかは個人次第でしょう。
(参考:平成28年 地方公共団体別給与等の比較 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/c-gyousei/teiin-kyuuyo02_h28.html)
これから警察官になる人へのアドバイス
これから警察官になろうと思っている人に何より必要で大切なことは「人を守りたい」という正義感です。
警察官の仕事は一旦大きな事件や事故が起こると、「勤務時間が終わったので帰ります」ということはあり得ません。
時には自分のプライベートを犠牲にしてでも、地域の住人のために昼夜問わず働くこともあるでしょう。
また、警察官経験者に伺ったところ、「思ったよりも頭を下げる仕事ですよ」との声をいただきました。
なるほど、多くの警察官の方々は緊急事態のとき110番で現場に来てもらっても、丁寧に落ち着いて対応してくださることが多く、腰も低い印象があります。
警察官は世間的にはとても信用のある職業です。
地域の人々やご近所さんからも頼りにされることも多いでしょう。
またカードを作ったり、引越しに際しての「信用」が必要な手続きで、断られるということはまずありません。
信用と信頼を集める仕事だけに、高いモラルが必要な職業と言えます。
これらの精神面以外に必要となってくる要素が、主に持久力メインの体力です。
これは採用が決まった後入学することになる、警察学校でイヤと言うほど実感することになるそうです(前出の経験者談)。
特に若い内は普段からの体力づくりが必須となります。
収入も良く、景気の浮き沈みに影響されにくいので一見安定した職業という一面だけがクローズアップされやすいですが、普通の一般企業に就職するような気持ちで入ると、そのギャップに驚かされるかもしれません。
さいごに
警察官の年収について紹介してまいりました。
年収が大きく違うポイントはキャリアか、そうでないかというところに尽きます。
その他警察官の給料は労働量と比較して、地域差、年齢・学歴の差はそれほど大きくないと言えるでしょう。
また他の公務員や民間の企業と比べても、比較的多くの収入を安定的に貰っています。
それだけに警察官はお金のことは気にせず、「人々を守る」という責任感と気概を持って職務にあたることが求められているようです。
最終更新日:2020年2月3日