中小企業診断士の年収を徹底解説|給料・初任給手取り・賞与(ボーナス)・各種手当
中小企業診断士の資格取得に興味のあるビジネスパーソンは多いと思います。
中小企業診断士は、主に中小企業を対象に経営コンサルティングを行い、企業の成長を促し経営課題を解決する専門家です。
経営コンサルティング業務自体は、ビジネスの知識や経験を備えた方であれば、中小企業診断士ではなくても行うことはできます。
実際に資格がなくとも経営コンサルティングを行っている個人や会社も沢山ありますが、特に中小企業支援法に基づき、国が一定のレベル以上の能力を持った者を登録するための制度です。
また、この資格は経営コンサルタントを認定する唯一の国家資格でもあります。
では、中小企業診断士の年収はどのぐらいになるのでしょうか?
ここでは平均年収の相場や雇用の形態、これから資格取得を目指す人へのアドバイス等について解説したいと思います。
中小企業診断士の平均年収は約500~800万円が相場
中小企業診断士の平均年収については様々な情報がインターネット上でも解説されています。
直近の客観的なデータとしては、平成27年11月に一般社団法人中小企業診断協会(以下、「診断協会」)が会員に行ったアンケートがあり、年間売上で最も構成割合が大きいのは「501~800万円以内」の層でした。
しかし、実際には実力や勤務先によってかなりの収入の格差があると思われます。
上記のアンケートでも、売上が「300万円以内」の診断士が8.9%存在する一方で、「3000万円以上」と回答している診断士も4.3%います。
この調査項目は年間の経営コンサルタントとしての稼働日数が100日を超える診断士が対象とされています。
このようにコンサルタントとして活動している診断士の他にも、大企業の社員、銀行員、公務員、商工会や商工会議所の職員、退職後に年金生活をされている方まで資格の保有者は幅広く、更には他の士業とのダブル・トリプルライセンスで開業している方も存在するため、かなりの格差があるのが実情です。
他士業との兼業という観点では、税理士や社会保険労務士で開業している場合に、経営コンサルティングの分野に幅を広げるために中小企業診断士の資格を取得する方がよく見られます。
中小企業診断士の年収の構成要素
独立した中小企業診断士が収入を得る手段としては、診断業務(現状を調査し、診断報告書を書くこと)、経営指導(アドバイスを行うこと)、講演・教育訓練(セミナー講師など)、経営顧問(顧問、社外取締役就任など)などがあります。
それぞれの報酬はどれくらい?
報酬はそれぞれの中小企業診断士が個別に設定していますが、上述の診断協会のアンケート結果による平均的な報酬額は以下の通りです。
診断業務は1日あたり10.5万円、経営指導は1日あたり11.0万円、講演・教育訓練は1件あたり12.5万円、経営顧問は1月あたり17.0万円、これは主に民間から業務を受注している診断士の方の平均額です。
1日あたり10万円を超える報酬は高額に見えますが、診断業務や経営指導、講演などはこれらに必要な地道な準備作業もあり、経費も嵩みます。
多くの顧客を抱えているベテランの独立診断士は、稼働可能な時間や経費のバランスを勘案しつつ、オーバーフローにならないように業務を受注している場合が多いです。
また、税理士、社会保険労務士とのダブルライセンスで開業している場合は、税理士では確定申告や記帳代行、社会保険労務士では給与計算や労働基準監督署からの立ち入りへの同行など、業務内容も更に幅広くなるため、報酬については上記に限らず多様な状況です。
賞与(ボーナス)、各種手当てはどれくらい?
個人事業主の場合は基本的に賞与、各種手当てはありませんが、コンサルティング会社を立ち上げている場合には、賞与や各種手当てを経営者として設定することもあります。
売上、経営状況によって、一般の企業並みに賞与や各種手当てを整備する場合もあります。
独立せずに事業会社や各種団体に勤務している中小企業診断士であれば、その勤務先の給与体系によります。
例えば公務員に準ずる待遇の産業支援機関(都道府県、政令指定都市毎に設置されている財団法人など)や商工会や商工会議所に勤務する中小企業診断士であれば、4ヶ月分程度の賞与や充実した福利厚生が望めるでしょう。
中小企業診断士の年収を新卒や雇用形態別に見る
ここでは、中小企業診断士の年収を雇用形態別に見ていきます。
新卒の場合の中小企業診断士の年収
年収は就職先の企業によりますが、資格手当がある場合はその分がプラスされることになるでしょう。
金融機関やコンサルティング会社で概ね月額1万円~5万円の手当が用意されていることがあります。
新卒の時点で中小企業診断士を保有している方はそれほど多くありません。
平成31年度の中小企業診断士試験では、最終合格者のうち学生の占める割合は約1%(最終合格者905名中10名)でした。
年収というよりは、こういった金融機関やコンサルティング会社への就職活動の際に、アピールポイントとして診断士資格を訴求することができます。
また、その他の事業会社でも、経営企画やマーケティング、財務などへの素養があることをアピールできます。
年収としては、同年代の平均年収より若干高めの360万円~430万円ほどのようです。
社会人が転職する場合の中小企業診断士の年収(正社員)
年収はその個人の経験や転職先によります。
コンサルティング会社では、募集要項の歓迎要件として中小企業診断士を掲げている場合があります。
また、事業会社が経営企画や財務の人材を募集する時に、新卒者と同様にこれらの資格がアピールになることがあります。
パート・アルバイトの場合の中小企業診断士の年収
いわゆる一般的なパートやアルバイトの形で就業している中小企業診断士は多くはありませんが、都道府県の産業支援機関の窓口相談員や商工会議所のアドバイザーなどとして週に数回勤務する場合があります。
その事業の制度や財源によりますが、概ね日額2万円~3万円で業務委託契約を交わしていることが多いです。
稼働日数も人によってまちまちなので、年収がこのくらい、というのは一概には言えません。
独立した中小企業診断士で、こういった業務で経験や実績を重ね、顧客を開拓すると共にキャリアを積んでいく方もいます。
中小企業診断士は、最高でどれくらいの年収まで目指せるか?
独立の中小企業診断士は実力次第でいくらでも年収を伸ばすことが可能です。
実際、診断協会のアンケートでは、「3000万円以上」と回答している中小企業診断士も存在します。
これらの中には、先に述べたように税理士や社会保険労務士とのダブルライセンスなど他士業の兼業でコンサルティングの幅を広げ、高収入を得ている中小企業診断士が存在しています。
一方で、中小企業診断士の資格だけでかなりの報酬を稼いでいる方もいらっしゃいます。
要は実力次第なのですが、個人として独立してコンサルティングをする場合には、ある意味自分自身の稼働可能時間、体力的な限界が収入の限界と言えるかもしれません。
法人化し、複数の診断士や補助者を雇用している会社も存在します。
その場合は個人よりは更に多くの収入を得ている場合もあります。
都市部と地方の中小企業診断士の違い
独立の中小企業診断士でも都市部で活動する場合と地方で活動する場合には違いが出てきます。
都市部(首都圏、関西圏など)の場合
中小企業診断士の数も多く、診断士同士の研究会活動なども盛んに行われています。
他の診断士から刺激を受けられると共に、自治体関連の公的業務以外に民間からの案件受注のチャンスも多いでしょう。
ただし、競合となる経営コンサルタントや専門家も多いため、最初の仕事を受注することや実績を作っていくのはかなりの営業努力が求められます。
仕事のサイクルが軌道に乗れば、相応の収入も見込めるでしょう。
地方の場合
中小企業診断士の数は少なく、県単位の診断協会などを中心に活動が行われていることが多いです。
案件の絶対数は多くないですが、人口減や少子高齢化などで地方の中小企業は厳しい環境に置かれ、地方では中小企業診断士のような専門家は非常に貴重です。
営業努力は地方でも当然求められますが、最初は公的業務からの受注で実績を作り、その後は診断士や顧客からの紹介で仕事が仕事を呼んで軌道に乗っていく、というケースがよくあります。
中小企業診断士としての強みを作ること
都市部でも地方でも同じですが、いずれは何が付加価値としてクライアントに提供できるのか、自分を売り込んでいける強みを見つけていくことが必要です。
中小企業診断士はどういった勤務先だと年収が高くなるか?
独立をしなくても、中小企業診断士は様々な活躍の場があります。
活躍場所としては、産業支援機関・商工会・商工会議所、コンサルティング会社、金融機関などでの勤務が想定されます。
産業支援機関・商工会・商工会議所で働く場合の年収
産業支援機関(主に都道府県・政令指定都市毎に設置)の職員や商工会・商工会議所の経営指導員として中小企業診断士を募集していることが多いです。
正職員としての雇用であれば、概ねその地域の公務員の準じた給与体系となっており、比較的安定した年収となります。
勤続年数や役職にもよりますが、概ね400万円~700万円程度の収入が見込めるでしょう。
コンサルティング会社で働く場合の年収
日系や外資系で全国展開をしているようなコンサルティング会社では、比較的一般の事業会社よりは高めの年収となり、実力次第では1000万円以上の報酬も可能です。
ここでは中小企業診断士であるかどうかよりは、個人の能力やコンサルティング会社の激務に耐えられるかどうかが問われます。
金融機関で働く場合の年収
銀行、信用金庫など、金融機関の規模や業態によって年収は異なってきますが、地方銀行であれば、500万円~700万円が相場となるでしょう。
これから中小企業診断士になる人へのアドバイス
中小企業診断士試験に合格するには経営全般の知識、経営理論や財務会計、生産管理を勉強する必要があります。
MBAで学ぶ内容とも非常に似ているため、事業会社の経営企画、経理や財務などの部門への異動や部内でのキャリアアップとして受験をする人もいます。
試験の内容としては、一次試験は筆記試験(マークシート方式)、二次試験は筆記試験(記述式)及び口述試験です。
令和元年度の合格率は一次試験が30.2%、二次試験(筆記試験まで)が18.3%でした。これらを単純に乗じた最終合格率は約5.5%です。
令和元年度時点の一次試験、二次試験の科目は以下の通りです。
(一次試験)
経済学・経済政策、財務・会計、企業経営理論、運営管理、経営法務、経営情報システム、中小企業経営・中小企業政策
(二次試験)
組織(人事を含む)、マーケティング・流通、生産・技術、財務・会計
一次試験では中小企業診断士に必要とされる知識があるかどうか、二次試験ではそれを具体的な事例に応用し論理立てて解決策を記述できるかが問われる試験です。
幅広い知識が求められ難易度は高いですが、一次試験は科目合格も可能であり、仕事をしながら長期的なプランで突破することもできます。
元々ビジネスの知識がある方や経営学や会計を勉強したことがある方であれば、一次試験は独学での突破も困難ではありません。
ただし、効率良く知識を整理しておくことが必要でしょう。
二次試験は二次試験専門の予備校も存在するぐらいで、難易度は高いです。
出題形式に慣れることと、独りよがりな回答ではなくきちんとしたロジックと経営診断に関する常識的な判断能力があることを、採点者に伝えられるかどうかがポイントです。
また、この資格は登録後に5年毎に更新が必要です。
新しい知識の補充に関する要件(5年間で5回の更新研修等)、実務の従事要件(5年間で30日以上)のいずれも満たさなければ更新ができません。
資格取得後の活用方法も具体的にイメージしながら勉強をすることが大切です。
さいごに
中小企業庁が作成した「2019年度版中小企業白書」によれば、日本の企業全体に占める中小企業の割合は約99%であり、製造業、卸売業、サービス業などの様々な業種で中小企業が日本経済を支えていると言えます。
しかし、人材や設備、資金などの経営資源を豊富に持った中小企業は多くありません。
グローバル化に伴う経済環境の変化への対応、取引先の倒産や思わぬ災害の発生、様々な困難に少ない経営資源で立ち向かわなければならない中小企業の経営者の悩みは尽きません。
クライアントの中小企業の現状を把握し、悩める経営者に適時適切なアドバイスを行い、企業の成長を支援し、ひいては日本経済の発展に貢献することが中小企業診断士に期待される役割であり使命です。
最終更新日:2019年12月12日