カメラマンの年収を徹底解説|年収の構成要素や年収アップさせる方法
スマートフォンの普及やデジタル一眼レフカメラの進化によって、誰もが簡単にキレイな写真を撮ることができる時代になりました。
そのため時代と共にプロの需要がゆるやかに減少していますが、それでも写真を売って生活する人、そしてしっかり稼ぐプロカメラマンが多いことも事実です。
それでは実際のところ、プロカメラマンはどのくらい稼いでいるのでしょうか?
今回はカメラマンの多様な働き方や、写真の相場を基にした年収について徹底解説します!
多様なカメラマンの雇用形態、平均年収も様々
カメラマンの働き方は大きく三つに分類されます。
「企業に正社員として所属するカメラマン」「自身のスタジオを持ち撮影活動をする独立系カメラマン」「多様なニーズに合わせて自由に撮影活動を行うフリーランスのカメラマン」の三つです。
まずはその大まかな収入源についてご説明します。
企業所属のカメラマン
新聞社や出版社、広告代理店、全国展開している写真スタジオに正社員として所属しているカメラマン等が該当します。
新聞社を例に挙げると、正社員のカメラマンの中でも更に「報道部」「文化部」「政治部」「スポーツ部」といった部署ごとに、専門性の高いカメラマンが在籍しているところもあります。
一方で、人手不足の地方に行くと、一人のカメラマンが文化系(イベントや展覧会撮影)から報道系(事件事故やインタビュー撮影)に至るまで、全て一手に担って撮影していることも珍しくありません。
この場合の年収はいずれも総合職と同じ年収となります。
マスコミ系であれば関東圏なら平均800万円+残業手当、地方であれば平均650万円+残業手当。
全国展開の写真スタジオであれば、撮影のほかに受付業務や着付け・メイクの業務も含まれた上で平均350万円~400万円が一般的です。
カメラマンが必要になるシーンの特性上、残業手当や早朝・深夜の時間外手当、土日の休日手当が基本給に上乗せされることが多いということも企業所属のカメラマンの特徴でしょう。
スタジオカメラマン
自身のスタジオを持ち撮影活動を行う、個人事業主としてのカメラマンです。
結婚式場に隣接した写真スタジオのカメラマンもこちらに該当します。
(注:スタジオに雇用されているカメラマンは上記「企業所属のカメラマン」に属します)
スタジオカメラマンは、シーズンによって月収が大きく異なることが特徴です。
成人式がある1月、挙式の多い6月、七五三シーズンの11月は平日も土日もフル稼働で撮影スケジュールが入ることもあります。
閑散期の月と繁忙期の月を比べると月収が3倍近く異なることも珍しくありません。
スタジオの立地やサービスに左右されますが、年収は少なくて300万円ほど、多いところだと2000万円を売り上げるスタジオも存在します。
フリーランスのカメラマン
こちらも個人事業主になります。
フリーランスの仕事を挙げると「モデルの撮影」「ライブや演劇の撮影」といった芸能系の仕事にはじまり、「修学旅行の撮影」「学生のスポーツ競技会の撮影」といった教育事業系の仕事、「新築物件の撮影」など不動産系の仕事、「旅行代理店のツアー撮影」など観光系の仕事……と挙げればきりがないほど多岐にわたります。
カメラマンの中でも一番収入が安定しないのがこのフリーランスのカメラマンです。
長期契約していた高収入のクライアントからの仕事がなくなり年収がほぼなくなった、と路頭に迷うカメラマンもいれば、カメラを始めてたった1年で腕を買われて年収1000万円プレーヤーになるカメラマンもいます。
写真の腕と営業次第です。
カメラマンの年収の構成要素
カメラマンの収入を構成するのは「写真」と「撮影料」の価格です。
関東の企業と地方の企業でも大きく差が開きますし、写真が使われる媒体によっても、更には撮る「カメラマン本人の価格」によっても大きく価格が変わりますが、2020年現在の大まかな相場をご紹介します。
企業に所属しているカメラマンが撮る写真の価格
正社員としてのカメラマンの場合、写真撮影だけが業務として扱われているわけではないため写真単体としての価格の算出ができません。
インタビュー記事の撮影で10枚写真を撮ろうと、ライブイベントの撮影で写真を1,000枚撮ろうと、写真の枚数で収入が増減することがないからです。
ただし、災害現場の記録写真など危険な状況で撮影を行う場合、会社によっては「危険区域撮影手当」として少しだけ給料に上乗せされることがあります。
とは言え、これらは狙って獲得できる収入ではないため、基本的には総合職と同じ給与形態となります。
スタジオカメラマンの場合
スタジオカメラマンの場合は、「撮影料」「撮影カット料(枚数)」「納品形態(写真単品またはアルバム編集)」によって収入が構成されます。
撮影料とは
スタジオで写真の構図を決めシャッターを切ることにかかるお金…言い換えると人件費です。
スタジオにもよりますが、子どもを対象とした記念写真を撮るスタジオでは3,000円~5,000円ほど、結婚式の前撮りなどを対象とした写真を撮るスタジオではブライダル業界の価格ということもありで50,000円~というスタジオも珍しくありません。
割引キャンペーンや初回おためし価格ではここの撮影料から割引されることがほとんどです。
撮影カット料
写真1枚の価格です。
デジタルデータでの納品になるかプリントしたものでの納品になるかによっても価格が大きく異なります。
また、最近ではスマホの普及によって「決められた時間以内であれば何カット撮っても同一料金」と時間制で価格を設定するスタジオも人気を集めています。
納品形態
写真単体を納品する場合はともかく「アルバム」として1冊にまとめる場合は、時間と手間がかかる分価格が高いです。
複数の写真で起承転結を作りだすため写真の選定や順番、掲載サイズの選択に時間を割く分、1冊にまとまったアルバムは撮る側にとっても撮ってもらった側にとっても思い出の1冊となることは間違いありません。
スマホのアプリを使って誰でも簡単にアルバムができる時代になったとは言え、プロカメラマンが構図の細部にまでこだわって仕上げた1冊はやはり見ごたえがあるものです。
アルバムにしようとすると1冊あたり10,000円~、カメラマンによっては30,000円ほどを見積もることもあります。
仮に時給が1,000円だとして、編集に10時間かけると計算すると妥当な金額かもしれません。
フリーランスの場合
ピンからキリの価格差が大きいため「平均価格」とは言え個人差が大きくなりますが、代表的な仕事を例に大まかな写真の価格をご紹介します。
ブライダル
式の本番はもちろん、リハーサルの様子や披露宴、来賓のオフショットなどをくまなく撮影するスナップ撮影は1回あたり平均20万円前後です。
もちろん、式場のホテルの規模にも左右されます。
また、一部の例外を除き仕事は土日のみだというところがほとんどです。
(この場合、平日に前撮りやアルバムの編集をしているカメラマンがほとんどです)
スポーツ
試合の様子の撮影や、選手個人のプロフィール撮影などを担当します。
写真の価格ですが、スポーツの種類(球技or陸上競技、個人or団体etc…)のほか、プロスポーツとアマチュアスポーツでも価格が大きく開くため、マイナースポーツで且つアマチュアスポーツだと日給1万円程度、プロスポーツで尚且つメジャーなスポーツでは日給5万円、高いときは平均10万円前後です。
ちなみに撮影した写真が1枚だけ使われようと100枚使われようと、価格は時間制のことがほとんどです。
新聞・雑誌
大手の場合、紙面1面で平均5,000円です。
ただし、1ページに1枚の写真を使っても5,000円、10枚の写真を使っても5,000円と、掲載ページ数に依存することが多いです。
ファッション誌の場合、表紙の写真だと20,000円、本文のページは20枚の写真を使っても1ページ5,000円と1冊の中でも写真1枚の価格には大きな差があります。
また、この場合撮影した写真そのものを納品するというよりも、背景を透過(白抜き)するなど少し手のかかる加工を施して納品を求められる機会が増えてきました。
ネットメディアやネット通販などウェブ媒体
一部の例外を除いて、一番低単価と言われる媒体です。
というのも、ネットのほうが紙媒体と比べて情報量が膨大なため、安い写真をとにかく沢山欲しい、というメディアが後を絶ちません。
高いところでは1枚500円、一方で安いところでは1枚10円という会社もあります。
カメラマンは、最高でどれくらいの年収を目指せるか?
企業所属のカメラマン・独立系のカメラマン・フリーランスのカメラマンの中で最も高い年収を狙えるのは、フリーランスのカメラマンです。
私の知る中で最も稼いだフリーランスのプロカメラマンに年収を聞いたところ、最高年収は4000万円にもなったそう。
ただし、最低年収は400万円だというので、年によって相当開きがあることがうかがえます。
ちなみに最高年収を叩き出した年は、とある写真がきっかけでテレビに出演し、その後全国各地から仕事のオファーが相次ぎ365日ほぼ休みなしで働いたとのことでした。
カメラマンの年収をより高くするためにどんなことができるか?
フリーランスのカメラマンの場合、分野を広げれば広げるほど年収は高くなります。
本を出版すること
撮影活動のほかに一定数の印税が入ってきます。
出版と言っても、写真集に限らず撮影の指南本や小説の表紙・挿絵など様々です。
1冊を出版するまでに相応の労力がかかりますが、売れれば売れるほど継続して収入が上がります。
コンテストの懸賞金
プロカメラマンの間ではフォトコンテストの懸賞金がいわゆるボーナスのような位置づけです。
落選すれば0円(あるいは参加料でマイナス)ですが、コンテストによっては懸賞金が100万円を超えることも珍しくなく、更に受賞の実績ができることで普段の仕事の単価が上がったりと、良いことづくめです。
個展の開催費用
来場者数によっては赤字になるリスクもありますが、やりようによっては収入源になります。
お金の面以外でも作品を飾ることでカメラマン冥利に尽きるのがこの個展開催です。
この場合入場料だけでなく、物販を行うことで収入の足しにすることもできます。
動画・静止画を兼ねる
最近ではカメラの性能の進化によって、スチール(静止画)のほかに動画撮影を兼ねるカメラマンも増えてきました。
使用機材が同じだったとしても、ムービーを撮影した以上はムービー撮影料が上乗せされることがメリットです。
4Kデジタル放送の開始と共に、テレビでも「一眼レフカメラ」で撮影された動画が使用される機会が増えてきました(グルメや世界旅行系)。
中には、免許を取りドローン撮影もこなす器用なカメラマンもいます。
ただし、静止画と動画では一見似ているようで細かなスキルが異なることも多いため、動画用の知識を兼ね備えていることが条件と言えるでしょう。
これからカメラマンになる人へのアドバイス
ポジティブなアドバイス
スマホの普及やカメラ機材が進歩したことで、写真の単価は緩やかに下がり続けてはいますが、「被写体」があり続ける限りカメラマンの仕事はなくなりません。
映る人がいる限り撮る人がいるのです。
フリーランスの場合は、提案の工夫次第でいくらでも仕事を生み出すことができます。
中には「企業公式SNSアカウント」用の写真の代理投稿やマッチングアプリ用のアイコン撮影などを提案し、独自の路線で稼ぎ続けるフリーランスのカメラマンもいます。
一見博打にも見えるカメラマンの世界ですが、「好きなことで稼ぎたかった」「自分にしか撮れない写真で被写体を魅せたかった」「歴史に残る瞬間に立ち会いたかった」と夢を追う人が多い世界です。
やりたいことをとことん追求できて更にお金になる、と満足感が高い仕事です。
ネガティブなアドバイスで
いずれの場合もカメラマンは体力勝負の仕事です。
屋外の撮影では熱中症のリスクを伴うことも珍しくありませんし、修学旅行に同行するなどして数日間シャッターを切りっぱなしの生活になることも多いです。
つまり、体力と機動力があり鼻息が荒い若手カメラマンがライバルとして次々に出現します。
そうした若者に負けないように、体力づくりや営業スキルの向上が求められます。
また、企業所属のカメラマン以外は機材は自前が前提です。
カメラのボディからレンズ、外付けストロボに三脚、レフ版と一式揃えると、機材費だけでなかなかの値段になります。
独立系のスタジオカメラマンはここにスタジオの維持費や清掃費が入ってきます。
年収1000万円のカメラマンだったとしても、機材のメンテナンスや買い替えの費用などで粗利が700万円~800万円になることも。
機材あっての仕事でもあるため、いかに充実した機材でどれだけ高収入の仕事を撮れるかがカギになります。
さいごに
ピンからキリまで多様化しているカメラマンの年収。
企業に所属して安定した収入を得るも、フリーランスとしてハイリスクハイリターンを選ぶも、全ては貴方次第です。
それでも一言言えるのは「好きなことで稼ぐ仕事は楽しい」ということ。
一度きりの人生、ぜひ夢を持ってプロカメラマンの仕事を目指してください。
最終更新日:2020年8月31日